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 気功の科学


 気功を科学する

站とう功はなぜ体に良いのでしょうか。站とう功をしているときに身体の中で何が起こっているのでしょうか。
科学的に検証するために、練功者の体に種々のセンサーを着けて、生理データを同時に測定記録してみますと、色々な事実がわかってきました。 

站とう功
  
(たんとうこう)  
                
 
 町 好雄
(元東京電機大学人体科学研究室 教授)
 

                                         
     気功は中国で永い歴史を持つ健康法であり、気功法によっては医療気功であるものや、武術気功などがあり、歴史的に仏教、道教、儒教の中に発展したものや、名前も残っていないが民間で広まった功法などがあったそうです。 
「ひこばえ」には逐次、科学的に見た気功のデータを紹介いたしますので、皆様が気功をされる場合に参考にしていただければ幸いです。 今回は気功の中の基本であり、かつ奥の深い站とう功について書かせていただきます。

 
站とう功

 
站とう功は気功の中で基礎と言われ、流派によって40種類ほどもあるそうですが、初心者にとってやりやすい物もあり、三円式站とう功の例で話しを続けていきたいと思います。この気功は基礎ではあるのですが、健康法に良い気功法で元気が出る気功です。
 この気功は見た所、動作が全くない、静功と言われる方法で、気功中にはひざを少し曲げ、手は両手でバレーボールを胸の前当たりで持ったような格好で行います。少なくとも20分程度は同じ姿勢で立っているだけなのです。私は気功の研究を始めた頃、なぜこれが健康に良いかが見ただけでは理解不能でした。きっと何か秘密かあると感じたわけです。 
 我々は種々の気功と気に関して測定できないか試行錯誤をしてきましたが、健康に良いのであるならば西洋医学で使う生理測定をすれば分かるだろうと考えました。それ以来、測定項目を増して現在では多くの項目で測定をしておりますが、人体に関してはこのアプローチは正しかったと考えております。すなわち、気功状態では身体の中で何か起きているかを知ることができるわけです。 
 多くの気功師や気功を学習されている生徒さんを測定させていただきました。ここでは劉超先生のデータを図1に示しました。心臓の動きは周期的に細胞に電気が発生して心臓を電気的な刺激をするために動いているのですが、その電気信号を捕まえて、その時間軸スケールをつめて図に示してあります。通常、静かにしておれば心電図の最大値を示す電位をR点と呼んでおりますが、このR点は安静の時はほとんど一定の値を示しています。ここで示す心電図は通常見る心電図の時間軸が縮小されてその頭の電位がつながるように見えます。

   
図1 站とう功時の心電図と心拍数の変化
   なぜか、站とう功を実施中、心電図では大きな波のように変化していることが分かります。 さらに図1では心拍数を下に示してあります。もちろんこれは上の心電図から計算したものです。安静時には平均的に1分間あたり80 回程度ですが、站とう功中には心拍数は大きく変化していることにお気付きになられますね。この波のような形はどこからきたのでしょうか。 心拍数は110程度まで増加したり、少ない場合には70程度まで低下していることがわかります。しかしこの時には站とう功を行っていたわけで、ここでは全く体は動いていないのです。ここに站とう功の秘密があるのです。
それでは何を行ったというのでしょうか。その結果は図2をご覧になればわかります。すなわち下腹部の呼吸を平常よりより大きく息を吸い込んで大きく膨らませ、息を吐く時は吐ききるということで、そのために呼吸の回数が遅い状態で腹部呼吸をやっていることになります。その結果、R点電位が腹部の呼吸と同期して動き、R点の動きは、心拍数の変化になっていることがわかります。

   
図2站とう功時の下腹部の呼吸と心拍数との関係
  腹部呼吸 
  気功を行う時に大切なことに三調という表現があります。この三調は調身、調息、調心を意味し、姿勢を調節すること、呼吸を調節すること、さらに心(この場合は頭の中)の調整で、この気功は呼吸法が重要になっていることが分かります。この結果から、腹部呼吸で吸気の場合に心拍数が増加し、呼気の時には心拍数が減少することがわかります。
 このことは別の言い方をすると遅い呼吸と、それも胸呼吸ではなく腹部呼吸をすると頭にある自律神経系の中枢に働きかけ、吸気の時には交感神経系が活発に働くことが分かります。また遅い呼気の時には副交感神経系が活発に働きますが、站とう功では交感神経系がより活発に働いていることになります。つまり自律神経系は呼吸の仕方で制御できることを古代の人間は経験的に知り、一つの気功の効果として伝えてきたのであろうかと考えられます。
 つまり交感神経系が活発になりますと心拍数が増加するために站とう功では全身の血流が増し、やる気がでる気功なのです。あるいは自律神経系を腹部呼吸で変動させることが自律神経失調症のような病気を改善する効果もあります。 
 すなわち、図3で見ることができるように眠っていない状態で静かに安静にしているとLF/HFの数値が1〜1.5程度の数値を取りますが、交感神経系が強く働くとその数値が15以上になり、図では站とう功の始まりはやや頑張って、途中はリラックス状態で、後半には再び高くなっている。すなわちそれだけやる気をだしている証拠であるわけです。
   
図3心電図のR-R感覚のゆらぎから計算した自律神経系の働き
   もっと簡単に言えば、本当は走っていないにも係わらず心拍数が増加したのは腹部呼吸の振幅が大きく、かつ1分間に4ないし5回程度の腹部呼吸をすることで自律神経系の中枢をコントロールすることを先人が何かの時に見つけたのであろうと考えられます。自律神経というのだから自分の意志では調整できないと考えられていたのが、実は自分の意志で調節ができているということなのです。 今回はここで終わりますが、まだまだ身体の中で生理的な変化として捕らえられることがありますが、次回とさせていただきます。               
                                (会報誌 『ひこばえ』 第2号 2006年12月1日発行より)

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